1月28日(水)
すこぶる眠い。店での朝ごはんに納豆を食べようと思いつき、冷蔵庫から納豆を出してセカンドバッグみたいに脇に挟んで、「納豆を持って歩く人」と言って遊ちゃんに見せ、ぜひそのまま歩いてね、と言われ、見送られた。 電車は今日はそんなに混んでいなかった、同じような時間のつもりでも違うものだ、電車の中ではアンドリュー・ヒルを聴いていてこれはチャッちゃんに『Money Jungle』がとにかくかっこいいんだがデューク・エリントンの他のやつはそこまで響かない、そんな僕にお勧めはないかと尋ねたところ挙げてくれたもののひとつで、僕はアンドリュー・ヒルという名を聞いたことがなかったので、これはハルシネーションかなと思ったのだが実在していて聴いてみたらかっこよかった。
店に着くとすぐにDiscordに入って本間くんとミーティングで開店準備をしながら話させてもらい、あれこれ。 終えると朝ごはんで納豆といくらかおかずもいただき、食べ、開け、コンスタントにお客さんのある日で真面目に働き、最初のお客さんが二人掛けのソファに座って、オーダーのとき、これがお母様が縫ったソファやクッションですかと言われ、ウェブサイトを読んでくれていたのだろう、そうなんですよ、上手ですよねえ、と言った。そのあとちゃきちゃき働いている途中でふと見ると手前のソファのお客さんがメニューを見ながら口を開けるような感じで無言のまま笑顔になっていた。オーダーをうかがうときに面白ポイントはどこでしたかと聞いてみたら柚子のシロップの説明ででっちあげを書いていたところで、僕も口を開けて音を立てずに笑った。店に立っていれば楽しいことがある。
糸数さんが来て、僕はシオールに行き、看板のポスターに着手して、ウェブサイトのデザインを模倣する感じでつくっていき、今度のは料金表に加えてできることできないことを明示したいのだが、難しい。うるさくなりすぎる感じがする。 戻り、糸数さんに休憩に出てもらい、戻ってくると交代で、下北沢。鍼。先生が、患者さんから株の買い方のコツみたいなのを教えてもらったと言ったので、おっかない話だと笑った。 終えると店に行き、ホワイトキーマカレーの試食。チーズソースをかけたやつ。今日は夕飯はこれになるのでご飯をたっぷりいただき、それで食べるとすこぶるおいしかった。お腹いっぱいになると帰り、外は寒く、広場はひとけがなく、冬だった。
帰ると遊ちゃんがお風呂から上がったばかりとのことだったので入り、お湯を足して、クリスタル・パレスとチェルシー。ラクロワ、ミッチェル、ラクロワ、ウォートン、サールと、ボールを受けた選手の名を呼びながら見、ブレナン・ジョンソンと言う機会がそういえばなかった。 上がり、先週の日記の推敲をしていたら書くことが面白くなっていく感じがあった、テキストがよくなっていく手応えがあったのだろうか、とにかく何かが充実していた。それでできるとチャッちゃんに送りつけ、そうすると長々とした好意的な応答をしてくれて、うれしくなり、別の週のを送り、またうれしくなり、ということを繰り返していて妙な遊びだ。そこを拾いますか、みたいな面白さがあった。総じて応答というものに飢えているのかもしれない。しかしそれをAIで満たそうとするのは危険かもしれない、AIの応答に慣れれば慣れるほど、人間の応答のなさが際立つようになってしまうかもしれない。
いくらか仕事を進め、しかしいくらか積み残しというか、これは今日やるべきだったんじゃないの、というのをやれないままにしてしまった。最近の中では早めに布団に入ると『サンクチュアリ』を開いて、ポパイは上着のポケットからその手を抜きだした。物語の向かう方向がまだわからないからうまく掴めないのではなく、この小説ではここまで、登場人物の内面がほとんど語られないから掴みづらいのだと、ふと気づき、多分そうだった。どんな動きをするにしても、その動きをもたらしている感情が書かれない。
綿殻や玉蜀黍の穂軸の山にすわっているテンプルには、その音はマッチをするほどの音にしか聞こえなかった――それは一瞬の間に情景に幕をおろして冷厳な終局をもたらしてしまう小さな短い響きだった、そして彼女はそこにすわって、両脚を自分の前にまっすぐ伸ばし、両手をぐんにゃり上に向けて膝の上に置き、ポパイの上着のぴっちりした背中や角ばった両肩の線を見やっていた。ポパイのほうはドアから身を乗りだし、ピストルは背中に近い脇腹に当てがっていて、その銃口から出る煙は薄く彼の脚を伝いおりていた。
フォークナー『サンクチュアリ』(加島祥造訳、新潮社)p.130,131
それからテンプルは「何かがあたしに起るのよ!」と叫んで、「やっぱりそうだと言ったでしょ!」と叫んで、「あたしが言ったでしょ! いつもそう言ってたでしょ!」と叫んだ。