2月1日(日)
また思ったよりも早く起きて、変なものだった。遊ちゃんは今日は仕事らしく午前中から出ていた。今日もアイスコーヒーを淹れて、すっかりストレッチの習慣が消えてしまった。習慣というのはフラジャイルなものだ。歯磨きとか、フラジャイルじゃない習慣もあるから、習慣がフラジャイルなのではない。ストレッチをするとすっきりする感じはあるから、不快さを減じるだけではダメなようだ。歯磨きは、しているあいだにトイレに行ったり他のことができる。ストレッチに足りないのはこれだろうか。その5分とかのあいだにできることがない。何かを聴くとかはそれを埋めそうにも思うが、今はストレッチをするときはスマホで30秒ごとのアラームみたいなアプリを使っており常にチクタク音があり、その状態で音声再生すると聴きづらい。チクタクアプリは他のデバイスにして、聴きやすくするといいのか。今度はその他のデバイスを用意する手間が増えることがネックになりそうだ。それに音の環境を用意できたとして5分間でなにを聴くのか。ポッドキャストを細切れに聴くとかでもいいかもしれないが。音楽を一曲か。選ぶことに手間が掛かりそうだ。5分のニュース。朝から辛気臭い気持ちにもなりたくない。5分のサッカーニュース。結果は知りたくない。試合周辺の話題だけのものがあればいいが、そんな都合のいいものもなかなかなさそう。今日の予定を確認して考える時間。僕は音声でやり取りをするというのが今のところまったくないので勝手もわからないが、AIが今日予定されているミーティングや今日に設定されているタスクを読み上げ、僕が「これは今日やっちゃったほうがいいよね」とか言うと今日やる大事なタスクに設定してくれたり、取り掛かるにあたって何かネックになりそうなことはありますかとか聞かれて、このタスクはどういう手順になるかわからないせいか腰が重いんですよねとか言うとタスクを細かくするのを手伝ってくれたり、とか、その5分が終わると今日やることが明確になる、みたいな5分にすることができたら続けられるかもしれない。
雑事と思っているものはいつも思っている以上にボリュームがあるものだ、済むと今日も夕方だった。煙草を買いにコンビニに行った。空を見るとぽっかりと丸い月が浮かんでいて、車通りをうるさく感じ、路地に入った。コンビニに着くと、チョコも買った。
夜になり、ネタバレ回避機能のこまごまとした調整やブラッシュアップ。タイムラインだけでなく他の画面にも適応するようにできた。過去投稿のバッチ処理や判定失敗時のリトライは別枠でいいや。判定の精度も十分に見える。どのみち正解というものはありえない世界だし、これでもういいんじゃないか、完成したと言っていいんじゃないか。 夕飯は鶏肉とニンニクの芽と小松菜の塩味の炒めもの、人参のラペ、カブと長ネギの味噌汁、キムチ。リヴァプールとニューカッスルでゴードンが危なっかしいプレーを続けていると思ったらゴードンが決めて、わからないものだった。しかしすぐにエキティケのゴールで追いつき、そしてまたエキティケのゴールで突き放した。エキティケはもうすっかり笑わない。最初の笑顔が印象的だったので、また笑ってほしい、という気持ちがずっとある。
食後、ネタバレ回避機能のブランチをプッシュしてマージし、バックエンドのデプロイだけやっちゃおう、と思って0時40分だった。後方互換性は確認していたがデプロイはいつでも緊張感がある、今回はデータベースのデプロイもあるし環境変数の追加もあるのでより一層だった、今回は後方互換性の確認のためにバックエンドの変更だけを反映したブランチをつくるというこれまでやったことのない方式を試して、それも慎重さの表れだった、それでデプロイ時にいつもそうするように2台接続にし、デプロイ用のインスタンスでプルしてデータベースのデプロイをして環境変数を加え、アプリを触って問題なさそうなことを確認して次のインスタンスでそれをやるとその瞬間にアプリが落ちた。落ちたときの画面になった。 なんかやっちまった、と思うのと、息が止まりそうになるの、心臓が早鐘を打つの、それらは同じタイミングでやってきて、ともかく何かをやらかして、障害を起こした。もう日曜の夜更けでユーザー数も少ないから、と言い聞かせつつ、しかし真っ青になるような、肝が物理的に冷えるような、ひんやりとした心地で、ターゲットグループのところを見るとふたつのインスタンスがともにUnhealthyで、まあとにかく何かやらかした。 落ち着け、と思い、思いながら、はんぞーかくろじゅさんか起きてたりしないかなと思って、Discordに「なんかやらかした!(デプロイ)」と送り、どうしようもなくなったとき、通話するとかはありえるんだろうか、こんな深夜にそんなのあり得ない、と思ってから、ここだ、僕がやる脆弱性はここだ、明確な脆弱性だ、と思いながら、落ち着くしかないと思い、赤いUnhealthyが上下に並んでいる画面をスクショし、落ち着け、落ち着こう、Claudeに、落ち着こう、落ち着きましょう、と言い、スクショを貼って送った。クロちゃんが何かを返したが、それを読む前に、障害の周知だと思い、今そういうことをできるのはフヅクエのXのアカウントだ、クロちゃんにまずはSNSに書きましょう、なんて書いたらいいですかと尋ね、それを少しだけ編集してと投稿し、まだ強く緊迫はしていたが、まあ一晩ダウンしたって一晩だ、いいじゃないか、そう言い聞かせ、たしかに少しだけ落ち着き、やはりこれは去年の3月の経験が大きいというか、大量のアクセスでどうにもならなった、大量のネガティブなポストが寄せられた、あの時間の経験が大きく、どうにもならないときはどうにもならない、諦めるっきゃない、そう学んだし、それに、Readsが落ちたところで誰かの生死に関わる問題ではない、楽しい場所だ、楽しむための場所だ、なんでもない、受け止め過ぎるな、そう学んだ、あれは大きかったのだろう、少しだけ落ち着き、さてどうしたらいい? とクロちゃんに尋ね、言われたとおり、ヘルスチェックのタブの情報を伝え、アプリが動いているか確認し、リッスンしているか確認し、ローカルホストからヘルスチェックをし、それぞれの結果を伝えると、Node.jsへの接続が切れているということで、次にpm2のログを出してみると赤い文字がばーっと流れ、コピーして送ると原因がわかってopenaiというパッケージが見つからないよというエラーということで「ああ!」と思って、新しいパッケージを入れたのにnpm installを忘れていた! それでインストールし、リスタートし、少しするとひとつがヘルシーになり、そしてアプリが動き、そしてもうひとつのインスタンスでも同様のことをするとヘルシーになり、完全復活だった。復旧しましたのポストも下書きしてもらい、送ったのは障害のポストから10分後だった。安堵で全身の力が抜ける感じがあり、体がほぐれてばらばらになりそうだった。よかった。よかったし、対処できた、という自信にもなったかもしれない。よかった。
それから2時くらいまではぽやぽやとしながら、いくつかリサーチをしたり、アプリの健康を確認しにいったり、気を散らせたまま少しずつ働いて、それから布団に入り、今日も『サンクチュアリ』。テンプルがホレスに向かって、「暗い部屋のなかでも人の気配は感じられるものよ――そのこと、あんたも知ってた? 見なくったってわかるのよ。感じでピンとわかるわよ、ちょうど車に乗って、運転してる人がどっか駐車にいい場所を捜しはじめたなと感じるのと同じ――ほら、ちょっと駐車しましょうって気になったときにね」とのべつ幕なしにしゃべりまくっていた。
彼女はこんな調子でしゃべりつづけたのだ、いわば女性が自分は人々の注目を浴びていると気づいたときにする派手なおしゃべり調の独り言を続けたのであり、突然ホレスはこう納得したのだった――そうだ、彼女は実際に誇らしい気持で自分の経験を語っているのだ、と。その誇りとは素朴で無邪気な虚栄心ともいえるもので、いわば彼女はこの話を独り勝手な空想で作りあげているような気持なのであり、だからたえずすばやい視線を彼からミス・リーバへと転じつづけていて、それはまるで一匹の犬が二頭の家畜を小道のなかで追いたてるときのようだった。 フォークナー『サンクチュアリ』(加島祥造訳、新潮社)p.283
テンプルは5ページくらいしゃべていた。玉蜀黍の穂軸。ここからどうなるんだろう、と思ってから眠った。