2月6日(金)
眠い、起きて、歯磨き、外出。恵比寿に行く。交番の前に本間くんが立っていて、薄着だったので、薄着だと言うと、今日は暖かだ、と本間くん。僕は今日が暖かいとか寒いとかで服装を調節する人を格好よく思う、と考えながら、今日が暖かいだなんて、今まで考えてもいなかったが、そう言われるとたしかに今日は暖かいように思う、と考えた。
打ち合わせを終えて打ち合わせではおいしいハーブティーをいただいてそれがすごくおいしくて、けっこうびっくりして、その驚きはその後もしばらく残っていた。楽しい、いい打ち合わせだった。終え、僕は渋谷に用事があるので渋谷まで一緒に歩くことにして、線路に沿うような感じで歩いていった。歩いているとたしかにはっきりと暖かい日で、フェンスの向こうが線路で、ずうっと続く架線と、線路の向こうのビルの存在は感じ続けていたが、フェンスがグリーンで覆われていたのだったか、そうではなかったのか覚えていないが、電車が走っていくのを感じることはあまりなかった。線路は少し高いところを走っていると思っていたが、大きな歩道橋を過ぎるとはっきりと見えた線路は道路とまったく同じレベルで、それを意外に思ったことは覚えている。下から見る並木橋の構造が迫力があった。 そこを過ぎると景色がはっきり変わったわけでもないがもうだいぶ渋谷に入った感じがあって、きっと路地を入っていけば渋谷のラジオとかの細い通りにぶつかる、というか、渋谷川と並走している、ということのリアリティが急に強くやってくる感じがあった。それは路地のひとつひとつが線路沿いの明るい通りとは打って変わってじとっと暗く湿る感じが感じさせたものかもしれない。向こうには水がある、とその暗さは伝えてきた。そういう暗い路地のひとつに入って向こう側に抜けて、渋谷川のところには何台ものキッチンカーが出ていて、昼飯を買う人たちの姿があった。道の真ん中に立った蚊柱を通り抜けながら、食べ物にこの小さな虫たちは入りこまないのだろうか、キッチンカーの人は、ユスリカが入りこまないように、と考えるが、やれることなんてきっと限られているのだろう、ほどよい諦めが成立させる場というものがあり、それはそれでいいものなんだ、という考えが浮かんだ―といってもこれは感じただけであり、言葉になる考えではなかった。 横断歩道を渡って信金の前で本間くんと別れ、それで入って2階に上がって、返済の停止手続きだった。持ち物は収入印紙と印鑑とかで、若い行員に言われるがままに書類に日付を書いたり、住所を書いたりして、それから印鑑を渡した。行員がひとつずつ丁寧に押していき、その様子を見ながら、印鑑をきれいに押せない行員は信用されないぞ、とか教育を受けるのだろうか、とウケてから、ウケることではない、仕事はそういう細部からできあがるものだ、大事なことだ、そう思ってから押された印鑑を見るとあまりに鮮明なのでやっぱりウケた。
今回の返済停止手続きで知ったこと。政策金融公庫の返済停止手続きはものすごくスムースで、そして優しい。
渋谷駅は目の前にありながら遠く、中に入ったと思っても広大で、井の頭線のホームにはなかなかたどり着かなかった。 調布に戻って、歩けば歩くほど今日は暖かで、暖かいことを最も強く感じたのは日陰に入ってひんやりとしたときのことで、ひんやりと感じるその感じ方の中に、ほんの少しだけ、ほっとするようなものが混ざっているのがわかった。日差しから逃れて、心地よい冷気、というふうに感じた。明日からは雪という予報だが、今日で暖かさを前借りして、それで週末は暖かさが足りないから、雪になる。 帰宅すると遊ちゃんが布団で臥せっていて、昨日から体調がよくない、今日は午後は休みにした、ただ熱はなく、咳とかもなく、頭に靄がかかったような感じがある。花粉と黄砂のせいなんじゃないのかと職場の人に言われた遊ちゃんは、花粉と黄砂のせいにすることにして、夜に鍼に行くことにした。鍼を鼻にでも打ってもらうのだろうか。 アイスコーヒーを淹れて夕方はひとつ打ち合わせで、Readsのマネタイズについていろいろと意見を交わし、それから仕事を潰していき、どうしてなのか、鍼に行く遊ちゃんについていくことにして、並んで歩いて、夜になってもやはり暖かかった。鍼灸院の前で別れて僕は引き返し、スーパーに寄って刺身とかを買った。 今日やることが済むと昨日に続いてAndroidのリリースを試行したがやはりエラーになって、僕ではちょっと難しそうだ。週末はネタバレ回避機能の告知をしたかったが、Androidのリリース問題をクリアしてからだろう。 風呂に入り、上がると遊ちゃんが鍼から帰ってきて、鍼を打たれたらすっかり元気になったそうで、やはり鼻とかに打ってもらったのだそうだ。てきめんによくなったそうだ。すごいものだった。元気になって何よりだった。
マグロとブリの刺身 昨日の豚肉と長ネギのやつ ぴらぴら人参 しめじとしいたけをにんにくと塩コショウでくったり炒めたやつ 小松菜と玉ねぎの味噌汁 ご飯
食後、GAS。売上集計まわりでひとつうまく行っていなかったところを解消できた。2時ごろ床に横たわりて『死の床に横たわりて』。ダールの語り。ダールとジュエルが歩いている。キャッシュの鋸の音が聞こえてくる。
腕のたしかな大工だ、キャッシュの奴。奴はうまの上に板二枚をのせて、角を合わせている。これが箱の四半分になるわけだ。膝をついて、合わせ目を、眼を細めてのぞいて確かめ、それから下におろして、また手斧をとり上げる。立派な大工さ。お袋にゃあ、これ以上の大工、これ以上の棺桶なんて、ありっこなしだ。安心して楽々と休めるというもんさ。俺は家のほうへすすみ、その後から、手斧の、 こつっ こつっ こつっ という音。 ウィリアム・フォ-クナー『死の床に横たわりて』(佐伯彰一訳、講談社)p.8,9