3月30日(月)

午前中はミーティングで、昼はかけうどんだ。午後は着々と仕事を進めていたが、どこかでナーバスになっている感じがあって、値上げの告知をする日だからであることに途中で気づいた。夕方にそれに取り掛かって、お知らせ記事を公開して、投稿を済ませてしまおう、と考えてからまた二の足を踏んで、どうしてなのかワイアードカフェのメニューを見て足し算したりして、そうそうそうそうだそうだそうだそうだと考え、そうだ、フヅクエは全然高くない、フヅクエは全然高くないんだと考え、実際、値上げ後、フヅクエはコーヒーと食事とケーキで2920円でワイアードカフェだと2816円だから、本当に変わらない。セットドリンクにしたら変わるし、ワイアードカフェだと2品にしておけばぐっと安くなるがフヅクエだと2品だろうが3品だろうが変わらないから、違うところを探したらいくらでもあるわけだが、コーヒーと食事とケーキを頼んで、ひたすら読書に没頭できる環境で3時間過ごして、と考えたら、高いわけがないじゃないか! と絶叫していると遊ちゃんが部屋にやってきたので、値上げの告知をするんだと伝えると、そんなことしなくていいんじゃないの、と言ってきた、今はどこもナチュラルに値上げしているでしょう、ということで、値上げの告知をしなくていいならこれほどうれしいことはない、なので、そうかなあ? と言って、そうだよ、と言ってもらったので、そうかあ、と言って、それなら僕は、値上げの告知なんてしなくたっていいんだと考え、クロちゃんにも意見を乞うと、何が正しいとかではなく、あなたがどうしたいかじゃないでしょうか、というようなことで、ご説ごもっともだ。 どうしたいか考えてみると、フヅクエのことを知りたい人には知ってもらいたいが、フヅクエのことを知りたいわけではない人には知ってもらいたくない、フヅクエがどれだけの価値を提供しているか知りもしない人がろくでもない指を使って高いとかつぶやくのを目撃したくない。ワイアードカフェのメニューを見ているとフードは思ったよりも安く、一方で甘いものがフヅクエより一段高い感じでニューヨークチーズケーキは935円だ、バナナスプリットという豪勢そうなやつは1188円だ、ワイアードスペシャルというコーナーにある和牛ハンバーグのロコモコドリアというやつがおいしそうだ、そうやってまた気を散らしながらもうしばらく迷い、その末にインスタのストーリーにだけ投稿する、それはハイライトに入れておく、ということにして、それでいいそれでいいそれでいいそれでいい、と私は考え、遊ちゃんがスーパーに行くというので一緒に行くことにした。

冷蔵庫の中身だけ見て、夕飯をどうするか考える間もなく出、遊ちゃんは時間はあまりないらしくて、だからゆっくり悩むとかはできないと言われたので、どうしようどうしようどどどどどうしようというと、遊ちゃんは豚肉と大根を煮るといい、大根は薄く切って、そして豚肉と煮るといいと話したので、それを聞くと、 「そうだ」と私はいった。 それにすることにして、あとはキャベツのくたくたと小松菜の味噌汁としよう、そう考えて必要な材料をいくつか買った。 帰るとバイクを漕いで、先々週から週2度は漕ごうと思ってそうしているがそれが続いていてよい。月曜日に漕げたら、勝率はぐんと跳ね上がる。いい兆候だ。日本とスコットランドの試合の続きを見ながらで、今日は11人も交代できるらしく、たくさん交代しながら試合が進んで、スコットランドのハムデン・パークの客席は楕円形でこれはスコットランドスタイルなんだそうだ。試合が活発になっていき、塩貝が走り回るし守備は効果的だしとてもいいと思っていたらその塩貝がああいうのもポストプレーというのか、いいランニングからボールを受けた鈴木淳之介が入れたグラウンダーの鋭いパスを背中向きで、相手を押し返しながら、ちょこんと前に落として、それを伊東純也が少し前に運んで切り返して強く蹴って、キーパーは足に当てたが足りず、跳ねたボールがゴールに飛んでいった。日本先制の場面である。

風呂入り、続きを見、試合が終わり、上がると仕事に戻り、夜中まで続け、豚肉と大根と長ネギを煮たやつ、キャベツと玉ねぎをくたくたに煮たやつ、小松菜としめじの味噌汁、それらをPIVOTの代表選レビューのやつを聴きながらこしらえた。聴きながら食べた。それから布団に入るとシュリーヴがというかボンが「なぜだろう? なぜだろう?」と考えていて、それから「それにしてもなぜだろう? なぜだろう?」と考えていた。シュリーヴは長々とボンの考えを語って、

「(…)彼ではなくて自分が臆病風に取っ憑かれる方がましだった と思ったろう。――待ってくれ」とシュリーヴは、クェンティンがなにもいわないのに叫んだ。というのもそれまでゆったりと背を丸めていたクェンティンの様子に、なにか話し出そうとするような、なにかの動きが、多少の緊張が見られたために違いなく、そこでシュリーヴはクェンティンが話し出さないうちに、待ってくれ、待ってくれ、と叫んだ。

ウィリアム・フォークナー『アブサロム、アブサロム!(下)』(高橋正雄訳、講談社)p.165,166

せわしなくていい。

3月31日(火) ↓