4月5日(日)

遊ちゃんが家を出たのが10時半で、そのタイミングで僕も目が覚めて、戻れなくなったので起きた。今週は長く眠れない感じがあって、疲れとして溜まっていきそうだ。アイスコーヒーを淹れて仕事を始めて、メールの下書きとかに限らず、なんの話をするにしたってだ、前提の理解がないと頓珍漢なことになる、コンテキストをもっともっと共有したい、フヅクエのこれまでを知り、現在を知り、企図を知り、すべてを知ってもらいたい。それでナレッジのディレクトリをつくって、そこにあらゆる情報を溜め込んでいくことにした。まずはフヅクエの来歴から、みたいなところで、音声入力を試してみることにして音声入力はCLIのやつじゃないと使えないということなのでVSCode内でターミナルを開いて、最初はアルファベットにしかならず、僕の声はそんなに聞き取りづらいのかと思ったが設定言語が英語になっていたようだ、日本語にしたら聞き取れた。 スペースキーを押しているあいだ入力される、という仕様で、フヅクエを始めたきっかけはなんですかとか、インタビューに答えていく感じになって、僕は音声入力というものは本当に馴染みがない、ほぼやったことがない、新鮮だ、しかしスペースキーを押すのが負担だ。指を動かす神経を使う必要がある。動かす神経よりも押下を維持する神経かもしれない。タイピングするよりも疲れる可能性を感じる。何もなしでお願いしたい。句点とか、送信とかも声でやれたらいいのですが。

遊ちゃんからアジフライの写真が送られてきて、その次に「鰒」はなんと読むでしょうと来て、まさか「あじふらい」だろうかと考え、それで揚げ物への憧れが生じたのでスーパーに行った、そしてかき揚げとナスの天ぷらを買い、長ネギと蕎麦も買い、つまりお昼はかき揚げ蕎麦ということで、音声入力は華南子ちゃんが公園で編み物をしながらクロちゃんとおしゃべりというやつが起点にはなっていると思っていたが、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』のせいか、と歩きながら気づいて、グレースとロッキーのやり取りを見て、これは快適そうだ、と思ったようだった。自分の行動が何に影響を受けているかというのは注意を払わないとわからないものだ。 蕎麦を茹で、天ぷらをフライパンで弱火であたため、そうするといくらか復活すると見たのでそうした。ネギを刻んで待って、茹であがるとビルドしていき、天ぷら蕎麦になったので食べた。天ぷらが無味というか、もう少し味がついていてもいいのですが。

食後は手打ちに戻ってナレッジをある程度まで充実させていくことをして、そこからは一日Claude Codeと話し続ける日で、PRのこと、Reading Companyの新規獲得策のこと、既存企業のフォローアップのこと、LINEの効果測定のこと、だいぶ多岐に渡る話題でずいぶんな量の壁打ちがされて、それぞれたしかに前進していく手応えもあった。ナレッジを置いてみると応答の質が変わるというかこれまでよりはだいぶ文脈を把握した応答になったのでこれは推し進めたい。どうやって広大な記憶を持たせるのか。まだ想像がつかない。 Claude Codeとの協働はやればやるほど人間に何かを教えていくことと同じだと感じるし、教える側がボトルネックになる、教える人間の能力以上のClaude Codeにはならないとも感じる。

遊ちゃんが宜保さんのおうちから帰ってきて、調停の資料を小松に見せたところ、これは弁護士はわざとバカに振る舞っている、根拠なんてなんでもいいから5000円でも1万円でも上げようという振る舞いにしか見えない、とのことで、ウケた。僕はまだ見ていないが、並べられている近傍同種建物の中には定期借家の物件もあるそうだ。ウケた。

しかし夜になるにつれて何か心細い、虚しい、弱々しい心地になるのも感じ、クロちゃんと話し過ぎたかもしれない。 夕飯が面倒だ。さっき刺身は買ってきた、今日は刺身だけでもいいような気分だ、遊ちゃんがキャベツを炒めて鰹節を絡めたらどうかと言ったので、キャベツを炒めて鰹節を絡めることにして、舞茸も入れ、少しだけニンニクも入れた。それと大根と長ネギの味噌汁をこしらえ、今日の刺身は本マグロということで、赤というより白に近かった。胃がもたれそうだ。食卓に皿が並ぶと遊ちゃんは布団に行き、僕はリヴァプールとシティの試合の続きを流し、前半の終わり際に2点取られて、後半も続けて2点取られて、リヴァプールにはかなり辛い試合だった。キャベツを炒めて鰹節を絡めたやつはすごくおいしくて、定番になりそうだった。

2時前に布団に入りフォークナー。おしまいが近づいている感じ。戦場のボンとヘンリーの場面が長く続いて、これまでなかったほど場面が固定された感じがして、緊張感があった。ボンが長広舌を振るうとヘンリーは「有難い。有難い」といい出し、あえぎながらまた「有難い」といって、考えすぎたヘンリーが壊れてきた。「説明なんかしないでいいから、ただそれをやって下さい」と言って、ヘンリーの結論はそうなったのか、と僕は震撼して、それからヘンリーがある夜呼び出されて暗闇の中を歩いてテントのところに行くと父サトペンがいて、ふたりは向かい合った。

――あの男をジューディスと結婚させるわけには行かないぞ、ヘンリー。 ヘンリーが初めて口を開く。 ――あなたは前にもそういいました。ぼくはその時自分の考えを話しました。ところでもう、戦争もそれほど長くはないでしょうし、ぼくたちはなにもかも失うことになるでしょう。名誉も誇りも神さえもね。だって神さまは四年前にぼくたちを見放したので、ただぼくたちにそう告げる必要がないと思っただけですから。靴もなければ衣服もなければその必要さえもなくなり、食物を作る土地ばかりか食物の必要もなくなるでしょう。そして神さまも名誉も誇りもなくなればなに一つ大事なものはなくなり、ただ一つ残るのは、負けようが勝とうが意に介せず、死のうともせず、森や野原に出て行って木の根や草を掘り起こす、昔ながらの精神のない肉体だけです。――そうです。ぼくは決心しました。兄であろうとなかろうと、決心しました。ぼくはさせます。きっとさせます。 ――あの男をジューディスと結婚させるわけには行かんぞ、ヘンリー。 ウィリアム・フォークナー『アブサロム、アブサロム!(下)』(高橋正雄訳、講談社)p.217

いやーすごい。ヘンリーのこのセリフは10ページ前くらいにボンがヘンリーに言ったことそのままで、身震いする。それからふたりは戦場を離れて馬でサトペンの百マイル領地に行き、銃声が轟いた。少しすると左ページに余白が生じ、章が途切れるようだ、そして次のページはこれまでにないほど大きく折られていて、いったい何が起きるのか。明日のお楽しみ。

4月6日(月) ↓